第7章  ソフトウェア開発委託の継続的取引きに

おける基本契約書及び個別契約書

 

1 請負型の継続的取引における基本契約の問題点
(1)基本契約と個別契約

1)基本契約と個別契約の関係

 同一の客先からたびたび業務を受託する場合、個々の取引ごとに契約書を取り交わす煩わしさを避けるため、最初に共通的な基本的な事項を定めた基本契約書を取り交わしておき、具体的な受発注は注文書・請書の交換によって行うことが一般に行われている。
 従って、基本契約を締結したとしても、具体的に権利・義務が発生するわけではない。ソフトウェア開発における各種の基本契約書例を後掲しておくが、このような基本契約を締結する取引というのは、相手方がハードウェアのメーカーであったり、強力なユーザーであったりして、委託者の方が経済的に強者であるのが一般的である。このため、一方的に不利な契約を押し付けられることが多い。

 そこで、問題がありそうなときは、注文書と請書の交換ではなくて、個別に双方が連署する契約書を取り交わすか、それとも請書に受託条件を明記して個別契約を締結するようにする。後掲する事例では、注文書・請書の交換ではなくて、個別契約にあたり個々に連署式の契約書を取り交わしている。

2)個別契約の成立

 具体的な権利・義務は個別契約の成立によって発生する。この個別契約はいつ成立するのであろうか。発注書が相手方に届いた時点であろうか。それとも発注書の到達を受けて請書を発送し、相手に到達した時点であろうか。

 商法の509条(諾否の通知義務)では、「商人が平常取引をする者よりその営業の部類に属する契約の申し込みを受けたときは、遅滞なく諾否の通知をしなければならず、その通知を怠ったときは申し込みを承諾したものとみなす」旨規定している。

 基本契約に何の定めもなかったとすると、継続的な取引においては、遅滞なく諾否の通知をしないと、その注文を承諾したものとされてしまうわけだ。委託者としては注文書を発送すればよいが、受託者としては個別契約の成立について明らかにしておく必要がある。
 そこで、例えば、「委託者から注文書を受領し、その注文書に対する請書が相手方に到達した日に個別契約は成立する」というようにしておく。

3)個別契約と基本契約の矛盾

 個別契約で基本契約と異なる取り決めをした場合は、その個別契約においては基本契約と異なる合意をしたものとして、個別契約で取り決めた事項が適用される。

 

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