第6章 ソフトウェア開発委託契約の問題点と契約書

 

1 システム開発契約における問題点
(1)委任契約と請負契約の選択

1)委任契約と請負契約の違い

 システム開発委託契約は民法上の契約の区分からいうと、委任(法律行為以外の委任なので「準委任」。本書では「委任」と総称する)あるいは請負契約と考えられる。請負は「仕事や物(プログラムなど)の完成」を約すことが契約の目的であり、委任は「プログラムを開発するために知識や労力といったサービスの提供」をすること自体が契約目的となる。換言すれば、請負において対価を得るためには、プログラムを完成させなければならない。

 委任において対価を得るためにはプログラムを開発するために知識や労力などのサービスを提供しなければならないということであるが、委任においてはプログラムの完成ということは約されていない。すなわち、プログラムが完成しなくても、今までになした履行(サービスの提供)の割合に応じて報酬ができるわけである。

 また、定額の請負においては、原則として経費が増加しても契約金額を変更することは
できない。これに対し委任の場合は、委任事務の処理(この場合、システム開発のための役務の提供)のために必要な費用は償還請求ができる。

 結論からいうと、このようなことから、システム開発契約は委任型にすべきであると思っている。特に、新規の開発で困難度が高く、開発コストの見積もりが困難なような場合には委任型の契約にしておく必要がある。

2)委託・受託という言葉の意味

 一般によく「委託」という用語が使用されている。委託という言葉は法律用語ではなく取引用語である。法律用語としては委任と請負しかなく、委託という用語が使用されている場合は、契約全体をみて請負契約であるか、委任契約であるかを判断しなければならな
い。

 ①責任はどうか、②仕事の完成を約束しているかどうか-ということを中心に判断するわけである。仕事の完成を約束しているのであれば(仕事が完成しなければ代金が支払われない-代金の支払いの条件が仕事の完成となっている)たとえ「委託契約」という名称になっていても請負契約ということになる。

 契約名称だけではなく、契約全体をみて、その実質内容から判断しなければならないわけである。

 

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