(2)特別損害と会社の予見可能性

 今まで述べてきたA社の例に基づいて説明すると、①のA社に支払った金額は通常損害ということになる。②の請求書式、ファイリングシステムの変更に伴う損害は、プログラムにミスがあれば当然に発生する損害なので、これも通常損害といえる。④も同様に通常損害といえる。問題は③の逸失利益、逸失債権の問題である。これは特別損害なので、契約時にその損害を予見していたか、予見し得た場合は賠償しなければならない。

 通常損害についてはそれほど問題はないが、特別損害については、「それを予見し得たか」ということが問題になるわけである。このことは最も重要なことであるが、会社は、常にその損害を予見していた、あるいは予見しうる状態にある、ということである。というのは、そういうことを考えなければ、プログラムを作成できないからである。

 特別損害の例としてもう一例あげると、甲が乙に譲渡することを目的に丙にの開発を委託したようなケースである。丙が納期を遅滞してしまったため、甲は乙より契約を解除され、譲渡利益を逸失したような場合である。丙は、その損害の発生を予見し得た場合、甲に対してその譲渡利益相当の損害を賠償しなければならない。

 このように特別損害というのは、自らコントロールできるものではなく、賠償額も高額になる。にもかかわらず、何の取り決めもしなければ多くの場合、会社は、この特別損害をも賠償しなければならないわけである。

 そこで、責任制限条項が必要になってくるわけである。

 この条項で賠償義務を合理的にカットしておかないと、常に特別損害まで賠償しなければならなくなり、のコストがいたずらに上昇し、ひいては産業の発展にブレーキをかけることになりかねないのである。

 

 

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