(4)請負契約と瑕疵担保責任

 請負契約の瑕疵担保責任については民法634~640条にその規定がある。

 請負人であるソフトウエア会社は、まず瑕疵修補責任と損害賠償責任を負う。

 すなわち注文者であるユーザーは、瑕疵について相当の修補期間を定めて修補請求ができる(民法634条1項)。ただし、瑕疵が重要でない場合で、その修補に過分の費用がかかる場合は修補請求ができず、損害賠償請求しかできない(民法634条1項但
書)。

 また、ユーザーは修補請求に代えて損害賠償の請求をすることもできるし、修補請求と共に損害賠償請求も合わせてできる(民法634条2項)。

 では、ユーザーは常に修補請求に代えて損害賠償請求をなしうるのであろうか。修補が十分に可能であるにもかかわらず、損害賠償請求をなしうるであろうか。このような場合は、信義則上からもまず修補請求することが必要とされている。

1)瑕疵担保期間

 請負人であるソフトウエア会社が瑕疵担保責任を負う期間は引き渡しの日から1年である(民法637条)。ユーザーは、目的物の引き渡しを受けた日から1年以内に瑕疵修補、損害賠償の請求、契約の解除をしなければならない。

 瑕疵担保責任を負わない旨の特約も有効であるが、瑕疵の存在を知っていたにもかか
わらず告げなかったことについては責任を免れることはできない(民法640条)。

2)瑕疵を理由とする残代金の支払い拒否

 請負目的物に瑕疵がある場合、ユーザーは残った請負代金の支払いを拒むことができるのであろうか。

 「一方(ユーザー)は相手方(ソフトウエア会社)が債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる」(同時履行の抗弁権)ことが認められている (民法634条2項)。

 ユーザーとしては「ソフトウエア会社の瑕疵担保責任の履行と同時に残代金を支払う」と主張することができる。すなわち、瑕疵を理由に残代金の支払いを拒むことができるわけだ。しかし、これも無条件に認められているわけではない。

 まず、ユーザーは請負人に対してその瑕疵担保責任の履行(修補請求)を求めなければならず、また軽微な瑕疵の場合は信義則の上からいって、残代金の全額の支払いを拒むことはできない。

3)瑕疵を理由とする契約解除

 また、瑕疵によって契約をなした目的を達することができないときは、ユーザーは契約の解除をすることができ、合わせて損害賠償の請求もできる(民法635条)。具体的には、使用にたえない重大な瑕疵で、修補が不可能であったり、修補可能であっても修補に長期間かかり契約をなした目的が遂げられないような場合である。

4)注文者の指図と瑕疵

 しかし、瑕疵がユーザーの提供したデータ類やユーザーの指図に起因するときは、ソフトウエア会社は瑕疵担保責任を免れることができるが(民法636条)、そのデータ類や指図が不適当であることをソフトウエア会社が知っていたにもかかわらず、これをユーザーに告げなかったときは瑕疵担保責任を免れることはできない(同条但書)。

5)請負目的物が譲渡された場合

 また、請負の目的物をユーザーが他に譲渡した場合においても、依然としてユーザーはソフトウエア会社に対して瑕疵担保責任を追及することができる。

6)瑕疵担保責任と債務不履行責任

 瑕疵担保責任というのは、請負人が作成したもの(ソフトウエア)に不完全な部分、すなわち欠陥があった場合に請負人が負う責任であり、あくまで仕事が完成していることが前提となる。もう一つ契約の当事者が負う責任として債務不履行責任がある。債務不履行は三つの類型に分けられるが、その一つに「不完全履行」という類型がある。契約の約旨に照らしてみて債務の履行(ソフトウエア作成)が“不完全”なことである。

 一般には、瑕疵担保責任も債務不履行責任も同一にみえる。どちらも仕事の“不完全”
さについて負う責任だからである。しかし、瑕疵担保責任と債務不履行責任では責任の負い方が異なっている。

 この両者の関係については、一旦仕事が完成しさえすれば、不完全な部分があっても請負人は瑕疵担保責任だけを負い、債務不履行責任は負わないとされている。すなわち仕事が同じ不完全であっても、未完成の間は債務不履行責任を、一応完成すれば瑕疵担保責任を負うだけになる。

 従って、仕事が完成した後は、ユーザーは請負人であるソフトウエア会社に対して瑕疵担保責任を追求する方法により救済を求めるしかなくなる。逆にいうと、仕事が最後の工程まで終わらないうちは瑕疵担保責任が議論になることはないわけだ。

 判例では、「引き渡された当時において、その約旨通りの機能を有せず、不完全な点があったことが認められる。しかしながら、民法は、第634条以下に請負契約についての瑕疵担保責任について規定する。右規定は、単に売主の担保責任に関する同法第561条以下の特則であるのみならず、不完全履行の一般理論の適用を排除するものと解すべきである。

 即ち、民法は、仕事の結果が不完全な場合を、仕事が完成しない場合と仕事の目的物に瑕疵がある場合とに区別し、後者については、右瑕疵が隠れたるものであると顕われたものであるとを問わず、そのために仕事が完成しないものとはしない趣旨と解すべきである。

 そして両者の区別は、その工事が途中で廃せられ、予定された最後の工程を終えない場合は、工事の未完成に当たり、それ自体は、仕事の目的物に瑕疵ある場合に該当しないとし、工事が予定された最後の工程まで一応終了し、ただそれが不完全なため修補を加えなければ、契約で定めた内容に欠くるところがあり、不完全な点が存する場合には、仕事は完成したが、その目的物に瑕疵あるときに該当すると解するのが相当である。
 従って一応仕事が完成し、ただその目的物に瑕疵のある場合には、注文者は、請負人
に対し、約定もしくは民法第634条以下の規定により瑕疵担保の責任を問うのはともかく、債務不履行の責任を問いえないものといわなければならない………一応引渡を受け、営業用に使用し、その後補助参加会社に、不完全な箇所について補修、改善、調整をさせていたにとどまるのであるから、仕事は完成しておりもはや債務不履行の責任を問いえないものというべきである」と言っている。

 

 

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