(2)ユーザーとの機密保持契約書(契約1~3)

 生産、経理、人事、販売などの企業にとって重要な情報を取り扱うような場合、ユーザーから申し入れられることもあるが、ソフトウェア会社としても責任を合理的範囲に限定するために機密保持契約を別に締結する。

 特に最近の傾向として、相手方の工場などで長期にわたって作業を行うような開発ではソフトウェア会社の従業員個人との間で別に機密保持契約を締結することを要求されることもある。このような契約の中には、ソフトウェア会社と従業員との間の雇用契約、就業規則の懲戒規定、機密保持契約よりも過重な責任を負わせている例もあるが、一定の範囲を超えてしまうとそのような契約そのものの効力も問題になってくる。

 このような問題は従業員の退職によって問題が露見するケースが多いが、退職後の機密保持契約については後掲しているので参照していただきたい。いずれにせよ、このような申し出に対しては、会社対会社で話し合い、会社の問題として対処していかなければならない。

 ここでは会社対会社の機密保持契約を取り上げることにする。

 契約1はユーザーとの間の機密保持契約の例であるが、前述した7項目が盛り込まれており、具体的に機密を特定しその管理方法を定めていることが特徴である。

 また、ここでは特定の業務について再委託を禁止しているが、現在のソフトウェア開発では不可避的に第三者が介入するので、下請け先との間でも後述するような機密保持契約を締結しておかなければならない。

 契約1は管理方法についても比較的詳細に定めており、ユーザーの事業所の一定の区画を作業場所として作業をする場合には、機密資料のリストの備え付けと保管状況のチェックを受けるための立ち入り検査権をユーザーに認めている。

  <契約1 機密保持契約書(その1)>


機 密 保 持 契 約 書

             
 委託者○○○株式会社(以下甲といいます)と受託者×××システム株式会社(以下乙といいます)とは、平成 年 月 日付システム開発委託個別契約(以下原契約といいます)に基づき以下の条項により機密保持契約を締結します。       

 第1条(目的)                              

 本契約は、乙が原契約の履行に伴い知りえた甲もしくは甲の顧客の機密情報を守秘するために締結され、乙の守秘義務の履行手続等を定めることを目的とします。  

 第2条(機密の定義)                           

 乙が守秘義務を負う機密情報とは、甲が機密として指定した甲もしくは甲の顧客についての機密をいいます。本契約履行のために乙に提供される書面については、甲所定の機密印を押印したものを機密情報といたします。ただし、次の各号の情報は機密情報には該当いたしません。                         

 ①既に公知となっている情報及び開示後に公知となった情報          

 ②甲が乙に公表することを承諾した情報                   

 ③乙が独自に開発したコンピュータ利用、データ処理についての技術情報    

 ④乙が守秘義務を負うことなく正当な第三者から適法に入手した情報      

 ⑤個別契約の締結前に乙が既に入手していた情報               

 第3条(禁止事項)                            

 乙は、前項に定める機密情報を機密に保持するために次の各号に掲げる行為をしてはなりません。                               

 ①機密情報を乙の担当者もしくは甲の承諾を得て第三者に再委託した場合のその
  担当者以外の第三者に開示すること                     

 ②機密情報を甲の承諾なしに原契約を履行する以外の目的に使用すること

 ③機密情報を甲の承諾なしに所定の場所より搬出すること           

 ④機密情報を甲の承諾なしに複製すること                  

 ⑤機密情報を甲の承諾なしに廃棄、残置すること               

 第4条(保管場所)                            

 乙は、機密情報を記録した書面その他物件(以下合わせて物件といいます)を甲もしくは乙の従業員だけが立ち入ることのできる場所に設置された施錠のできる保管施設(以下合わせて保管場所といいます)に保管しなければなりません。      

 第5条(従業員教育)                           

 乙は、乙の担当者に対して本契約に定める事項を十分に説明し、機密情報の保持についての教育を徹底し、これを担保するために乙の従業員との間で機密保持契約を締結するなどの策を講じなければなりません。                  

 第6条(再委託)                             

 乙は、原契約を履行するための業務のうち機密情報を取り扱う業務を第三者に再委託するときは、再委託業務の内容、業務に関与する担当者の氏名、経歴等の甲が要求する事項を事前に書面で甲に通知し、甲の承諾を得なければなりません。  

 第7条(機密情報の返還)                         

 乙は、個別契約に基づく作業が終了した場合、甲から提供を受けた物件をすべて返却しなければなりません。                          

 第8条(立ち入り検査)                          

 甲は、事前の通知なしに乙の守秘義務の履行状況を調査するために、保管場所に立ち入ることができるものとします。                      

 第9条(協議事項)                            

 本契約に定めのない事項または解釈上の疑義については、甲、乙双方とも信義誠実の原則により協議を行うものとします。                    

 以上、本契約の成立を証して、本書2通を作成し甲乙各1通を保有します。   

   平成 年 月 日                             

                   甲                          
                                      
                                      
                   乙                          
                                      
                                      
                                      

 
 契約2、3(次ページ)も同様な機密保持契約書の例である。

 

 

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