第2章  著作権の帰属についての問題点と契約文例

 

1 プログラムの法的保護のための著作権法の改正と要点
(1)プログラムの範囲

 プログラムが著作物であることが法律で明記された。

 ここでまず問題になるのがプログラムの範囲である。

1)ソフトウェアとプログラム

 ソフトウェアとは、プログラムよりも大きい概念である。WIPO(世界知的所有権機関)のモデル規定では、

 ①プログラム 

 ②プログラムを作成する過程で得られるシステム設計書、フローチャートを初めとする
   プログラム設計書など 

 ③プログラム説明書などの関連資料

を総称したものをソフトウェアといっており、プログラムについては、「機械が読み取ることができる媒体に収納されたときに、情報処理能力を有する機械に特定の機能、作業又は結果を指示させ、遂行させ又は達成させることができる一連の命令」と定義している。

2)著作権法でいう「プログラム」とは

 著作権法第2条第1項に第10号の2としてプログラムが定義された。ここでは、「電
子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう」というように、電子計算機に対する「指令」をプログラムといっているわけである。

3)各種のドキュメントはプログラムか

 「電子計算機に対する指令」ということからして、フローチャートや仕様書などのドキュメントは、このプログラムの範囲には含まれない。しかし、これらは従来どおり学術の著作物として、当然保護される。

4)電子計算機とは

 ここでいう電子計算機の範囲は、比較的広義にとらえられている。すなわち、記憶、演算、制御の機能を備えているものを電子計算機といっておりI/O機器がなくてもよい。このことからマイクロコンピュータも、ここでいう電子計算機の範ちゅうに含まれる。

5)ソースプログラムとオブジェクトプログラム

 プログラムの著作物性について、表現の様式は問われない。最初からオブジェクトプロ
グラムとして記述されたのであれば、そのオブジェクトプログラム自体が著作物となり、ここでいうプログラムに該当する。ソースプログラムからコンパイラーによって変換されたオブジェクトプログラムは単なるソースプログラムの複製物と解されるので、そのオブジェクトプログラム自体は新たな著作物(二次的著作物)には該当しない。

6)プログラム言語、解法、規約

 プログラム言語、解法、規約については、著作権法による保護が及ばないことが、著作
権法第10条第3項に明記されている。ここでは、プログラム言語、解法、規約について以下のように定義している。

 プログラム言語:プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう

 規  約:特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別
       の約束をいう
 解  法:プログラムにおける電子計算機に対する指令の組み合わせの方法をいう
         
 誰でも自由に日本語を使用できるのと同様に、プログラム言語自体は著作権の適格性がないわけだ。

 規約の典型的な例として通信プロトコルが挙げられる。

 ここで特に問題になるのは解法である。                     

7)解法とは

 一般的には、アルゴリズムといわれているものである。

 よく引き合いに出されるアルゴリズムの一例として以下のようなものがある。

 例えば、AとBの2つの整数があったとしよう。この最大公約数は下記のような手順で
求められる。

 ① AとBとを比較する

 ② AがBよりも小さければ、AとBを交換する                  

 ③ AとBが等しければその値が最大公約数となり、処理を終了する

 ④ AがBよりも大きければ、Aを(A-B)とする。そして①に戻る

 これは一つのアルゴリズムの例である。                     

 極論すればプログラムというのは、全体がアルゴリズムともいえるわけであるが、ここで保護の対象としているアルゴリズムというのは、もっと狭い意味でAからBに至るために1つの方法しかないようなものをいっている。