(3)具体的問題点の検討

 ①情報システムの開発にあたって客先のニーズを把握するために長期間客先に常駐   した

   客先で業務を行ったからといって、ただちに請負性が否定されるわけではない。客
  先に長期間常駐していたとしても、先に述べたように客先から指揮命令を受けて就業  しない限り請負と評価してよい。

 ②プログラム開発において客先のコンピュータを使用するため客先に長期にわたり常  駐した

   これも前記の例と同様の結論である。客先から指揮命令を受けているかどうかとい  うことだけが問題になる。客先のコンピュータを使用するということについては、先の
  告示第37号の第2条第2号ハでは、①機械、設備等を自らの責任と負担で準備する  か、②専門的な技術、経験に基づいて業務を処理するか-のいずれかの要件を満
  たせばよいことになっており、この場合は、②に該当すると評価されれば問題とはな
  らない。

 ③客先にて外形的に客先の労働者とこん然一体となって作業が行われている場合

   例えば、客先の労働者の中に配置された机で客先の労働者と同じような作業が行
  われるというような状況では、指揮命令の存在について誤解をまねく恐れが多分にあ  る。

   では、独立した一画を設け、そこに受託者側の技術者を配置しさえすればよいので  あろうか。このようなことをしても、それが法の規定に違反することを免れるため故意  に偽装されたものであるときは、労働者派遣事業に該当する(告示第37号第3条)。

   誤解をまねかないためには、部屋を別にするとか、机の島を別にするとか-すなわ  ち、受託者の担当者が一団となって作業を行う環境を形成する配慮が必要である。と  にかく、一番重要なことは実質的に指揮命令が行われているかどうかということであ
  る。

 ④注文と指示、指図

   前述したように指揮命令といわれているなかは、大別すると、①業務の遂行に関す  る指示、②労働時間などについての指示、③企業の秩序維持のための指示-があ
  る。実務上、特に問題となるのは、①の業務の遂行に関する指示-すなわち作業上
  の指示であろう。

   請負の場合であっても、当然、注文主としては請負業務の内容について注文を付け  るのが一般的である。となると、注文主の出す「注文」と、ここでいっている「指示」「指  図」とはどう異なるのであろうか。

   作業内容、方法について逐一指示があり、自由裁量の余地がないような場合は、こ  こでいう「指示」「指図」にあたるわけで指揮命令の存在を評価されるわけだ。

   請負における注文主の「注文」というのは、注文と成果との間にある作業について、  受託者側が専門的知識、経験に基づいて自由裁量で行う余地があるものをいってい  る。

   請負と評価されるためには、原則として注文にしても指示・指図にしても客先の担当  者から受託者(ソフトウエア会社。具体的にはソフトウエア会社の責任者)に対して行  い、個々の担当者に対する指示は、ソフトウエア会社の責任者からなされなければ
  ならないといえる。

   ただし、このような形式的手続を踏んでも、先に述べたような自由裁量の余地がま
  ったくないような指示・指図を頻繁に行うことは、やはり派遣と評価される公算が強い  であろう。

   進捗会議などに個々の担当者が出席して、その席上で委託者としての要望が出さ
  れ、これを受諾しても請負ではないとは評価されないであろう。また、システムがダウ
  ンした時などのいわゆる緊急時は、ソフトウエア会社の担当者に対する直接的な指
  示・指図も許されるであろう。

   作業場所が客先になる場合、ソフトウエア会社は、客先からの指示・指図を受ける
  責任者を選任しておく必要がある。この責任者は、派遣における派遣元責任者のよ
  うに法定されているものではなく、誤解をまねかないための措置である。この責任者
  は、その業務(受託プロジェクト)に関して、客先に対してソフトウエア会社を代理する  権限があると考えられるので、その権限を制限するためには、契約で代理できる権
  限の範囲を明確にしておく必要がある。

 ⑤マニュアルの提示

   例えば、仕様書の記述やコーディングのルールなどを定めたマニュアルを渡して、  これに基づき一定のルールにのっとった仕様書やプログラムを作成することは一向
  に差し支えない。

                                    

 

目次