(2)労働者派遣事業と請負事業の区分についての新しい基準

 要員派遣の問題を検討するにあたって、まず問題となるのは派遣と請負の区分である。ここで言っている請負という概念は、民法上の請負よりも広い範囲を意味しており、委任(準委任)も含む概念である。

 労働者派遣事業と請負事業の区分基準として、労働省告示第37号が定められている。この新基準は、自己の雇用する労働者を他人の業務に従事させる場合における派遣事業と請負事業との区分の基準を定めたものである(職案法施行規則第4条の規定は、労働者供給事業と請負との区分基準を定めたものである)。

 ここでは、1.「自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するもので」(同第2条第1号)、また2.「注文主より請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理しなければならない」(同第2条第2号)という2つの大きな要件を定めている。

 そして、1.の要件-自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること-という要件を満たすためには、

イ.業務の遂行に関する指示その他の管理を自らが行わなければならず(具体的には、  ①労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行い、②労働  者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うものであるこ
  と)、また、

ロ.労働時間等に関する指示その他の管理も自ら行わなければならず(具体的には、①  労働者の始業 終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理を  自ら行い、②労働者の労働時間を延長する場合または労働者に休日に労働させる
  場合における指示その他の管理を自ら行わなければならない)、さらに、

ハ.企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行う必要があ  るわけである(具体的には、①労働者の服務上の規律に関する事項についての指示  その他の管理を自ら行い、②労働者の配置等の決定及び変更を自ら行わなければ
  ならない)。

 2.の要件-請け負った業務を自己の業務として注文主から独立して処理するもので   あること-という要件を満たすためには、

イ.業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁し、
  また、

ロ.業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべて  の責任を負い、
  さらに、

ハ.①自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備もしくは器材または材料等によ
  り業務を処理するか、あるいは②自己の有する専門的な技術もしくは経験に基づい
  て、業務を処理しなければならない。

 ①「業務の遂行方法に関する指示」とは

   「業務の遂行方法に関する指示」とは、いわゆる作業指示のことで、仕事の割り付
  け、順序 緩急の調整といったことをいう。

 ②「業務の遂行に関する評価」とは

   「業務の遂行に関する評価」とは、勤怠点検、出来高査定といったことをいってい
  る。

 ③「服務上の規律」とは

   例えば、制服を着用させるなどということもこれに該当するが、安全衛生などの合理  的な理由があれば、一律に請負性が否定されるわけではない。

 ④機械、設備などの自己調達について

 ここでは請け負った業務を処理するための機械、設備などは、請負人自らが調達しなければならないといっているが、カッコ書きで「業務上必要な簡易な工具を除く」とある。
これは、消耗品的な物を指しており、消耗品的な物を除いた機械、設備は受注者が責任と負担で準備する必要があるわけだ。

 この機械、設備などを注文主から借り受ける場合は有償契約、すなわち有償の双務契約を別個に締結しなければならない(注 書面にする必要はないにせよその機械、設備なりを使用する対価として、賃料などを支払わなければならないわけだ)。

 ただし、下記の「専門的な技術若しくは経験」を必要とする業務においてはこの要件は必要ない。すなわち、相手の場所や機械を無償で使用してもよいわけだ。システム設計、プログラム設計業務は、この「専門的な技術若しくは経験」を要する業務といえる(ただ機械的なコーディングについては「専門的な技術若しくは経験」を要する業務とはいえないであろう)。

 ⑤「専門的な技術若しくは経験」とは

 これは、個々の労働者の技能などをいっているのではなく、受託者が企業体として有する技能、技術といったことを問題にしており、請負といいうるためには自由裁量で業務を遂行することのできる能力を企業体自体が有していなければならないということをいっている。

 以上述べてきたことをまとめると、下表のようになる。

  <システム設計、プログラミング業務において請負事業といいうるための
    チェックポイント>

1. 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行っているか  
2. 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行っている
  か

3. 始業、終業、休憩時間、休日休暇等に関する指示その他の管理を自ら行っている  か

4. 残業、休日出勤の指示その他の管理を自ら行っているか            

5. 労働者の服務上の規律に関する事項について指示その他の管理を自ら行ってい
  るか

6. 労働者の配置、変更等の決定を自ら行っているか               

7. 業務処理に必要な資金につき自らの責任の下に調達し、支弁しているか     

8. 業務処理にあたって法律に規定された事業主としてのすべての責任を負っている
  か


 「請負事業」であるといいうるためには、上記の事項のすべてに該当しなければならない。これらを注文主にゆだねることはできないわけだ。

               

 

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