第14章 要 員 派 遣 契 約 書

 

1 「派遣」と「請負」の区分基準
(1)労働者供給事業と労働者派遣事業

1)労働者供給事業の一部解除

 職安法第44条では、「職安法45条に規定する労働組合の他に労働者供給事業を行ったり、労働者を受け入れてはならない」ということが規定されている。

 労働者供給事業とは、自分の支配下にある労働者を供給契約に基づいて他人に使用させるもので、供給元と労働者との間に事実上の何らかの支配関係があり、供給先と労働者の間にも雇用関係または指揮命令関係があるという、このような形態で行われる事業のことである。

 この典型的な例として、戦後間もないころの土木作業や港湾荷役作業を挙げている。すなわち、封建的な親分・子分的な支配関係を利用して労働者を送り、自分は上前だけをはねるといった事業形態である。職安法の立法当時は、このようなことが社会問題化していたため、このような事業形態を禁止したわけである。

2)労働者供給事業と労働者派遣事業

 最近では職安法立法当時に想定したこのような労働者供給事業はなくなったが、従来の人材派遣についても、法解釈上は労働者供給事業に低触する疑いが多分にあった。すなわち、自己の雇用下にある労働者を派遣し、派遣先から労働者が指揮命令を受けていると思われるケースもあったからだ。

 ところが、最近の人材派遣業といわれている事業形態については、従来の封建的支配関係を利用した労働者供給事業の弊害がないこと、かつ高齢者とか女子の雇用機会の増大に寄与しているということなどから、一律に取り締まることについては反対も強かった。

 そこで、全面的に禁止されていた労働者供給事業のうち、「派遣元と労働者との間に雇
用契約関係があり、派遣先と労働者との間には指揮命令関係のみがある」という、このような形態だけを取り出して「労働者派遣事業」として解除したのが今回の措置である。

 今回の措置は、あくまで労働者供給事業のうちの一部の形態だけを解除したもので、従来の労働者供給事業の禁止が全面的に解除になったわけではないので、留意する必要がある。

 すなわち、派遣元との間に雇用関係がない者を派遣するということは、今回認められた
労働者派遣事業には該当しないわけである。例えば、他から派遣を受けた人や派遣元の取締役(派遣元との関係は雇用関係でなく委任関係である)の派遣はできないわけだ。前者は労働者供給事業として職安法違反の問題になり、後者は労働者派遣法の違反という問題になる。

 また、同様に、派遣元と派遣労働者との間には雇用関係があるが、派遣先と派遣労働者との間にも雇用関係があるという形態も労働者派遣事業には該当しない。出向という形態にはこのような関係が見られるが、出向も事業(継続反復して営利目的)として行えば、これは派遣の範囲に該当しないので、労働者供給事業として職案法違反に問われることになる。

 

 

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