2 ソフトウェア開発から情報処理まで行う場合の情報処理契約書
(1)システム開発及び情報処理基本契約書(契約1)

 情報処理契約は大きくソフトウェアの開発から行われるものと、情報処理だけを行うものに大別できるが、情報処理だけを取り上げてもバッチ処理、入力処理、オンライン・リアルタイム処理、付加価値通信(VAN)サービスなど、いろいろなパターンがある。

 契約1は情報処理契約について汎用的な使用を考えて作成した基本契約書の例である。ここではソフトウェアの開発を行い、情報処理までを行うことを想定しており、いろいろなバリエーションの情報処理契約に適用できるものである。

 VANサービスだけの契約であったならば、約款との関連性、「第二種電気通信事業者」という言葉を使用するが、バッチ処理も含めた包括的な情報処理サービスの基本契約書なのでこのような言葉は使用していない。

 取引の実態として、他で開発したソフトウェアによって処理だけを行うケースはあまりなく、ソフトウェアを開発した後に継続して処理を行うケースがほとんどなので、このようにソフトウェア開発と情報処理を1つの契約にしているわけである。

 この契約も基本契約と個別契約とから構成されている。従って、具体的な業務内容は個別契約で、システム開発、情報処理、その他の電気通信関係業務に分けて定めることになっている。「その他の電気通信関係業務」というのは、回線の賃貸借などの業務のことである。

 この基本契約書は、第14条までがシステム開発、情報処理の共通事項、第15条から第21条までがシステム開発、第22条以降は情報処理について定めた条項である。この情報処理には、前述したようにバッチ、リアルタイム、オンライン、オフラインなどさまざまな形態があるが、これをすべて包括して「情報処理」と言ってる。

1)委託業務(第1条)

 第1条では、委託業務の内容について定めているが、ここでは「情報通信業務」というような包括的な言葉を使用している。「情報通信」という用語を使用しているが、これは電気通信事業法の第2種電気通信事業者であることを意識した文言である。電気通信事業者は、電気通信事業法の定めに従って約款を郵政大臣に届け出なければならない。この基本契約は、通信についての約款の特約条項という位置づけになっている。従って、実務上は、約款を提示しながらこの基本契約を締結することになる。

2)適用(第2条)

 この契約書は、第21条までは一般のソフトウェア開発契約と同様の構成・内容になっている。

 第2条では基本契約と個別契約の関係を定め、個別契約については、双方が記名・押印する連署式の契約書によることを第4条で規定している。

3)委託料と支払い(第5条、第6条)

 委託料については個別契約で定めることになっている。支払い方法については、ソフトウェア開発については分割請求、情報処理については月額制を基本にしている。

4)担当責任者(第11条)

 一般にユーザー側の開発責任者は、複数のプロジェクトを同時に抱えているケースが多い。従って、興味のあるプロジェクトには力を注ぐが、興味があまりないプロジェクトは後回しにされることもある。ところが、契約上はそのプロジェクトの納期のほうが先だったりする。

 そこで、「この開発はあなたが中心です」ということを確認するためにこの条項を入れている。いずれにせよ、契約にあたって双方とも実務レベルの責任者を明確にしておく必要がある。

 特に最初の段階では営業担当者が窓口になっているため、いつになっても営業担当者に問い合わせがくる。情報処理についてはコンピュータの運用の担当者でなければ対応はとれない。方向違いの部署に緊急連絡などが行き対応が遅延しないようにするためにも、開発と情報処理とを分けて双方の責任者を定めておくとよい。

 また、開発面では、担当者が十分に検討しないで客先の要望を承諾してしまうというような問題をなくすためにも、意思決定のできる権限をもつ責任者を定め相手先に通知しておくことがよい。

5)仕様の変更(第15条)

 ソフトウェア開発契約では、プログラミング段階に入ってからの仕様の変更についての取り決めをしておく必要がある。ここでは、仕様の確定方法と一旦確定した仕様をユーザーが変更したときは、あらためて個別契約を締結すると定めている。

 以前はプログラムの検収段階になって、いろいろな要求が出てきてトラブルが起きるケースが多かった。そこで、検収段階ではプログラムの変更はできない旨の取り決めをしていた。

 しかし、プログラミング段階で発見される不備の多くは、プログラムの誤りというよりも仕様の不備に起因することが多かったため膨大な戻り工数が発生していた。このために、この契約では設計の途中で個々に仕様を凍結していくという方法を採用している。

 実務上は、あるまとまったドキュメントの提出ごとにユーザーから承認した旨の受領書をもらっている。

 なお、システムインテグレーション契約のように包括な委託契約では、ユーザー要件が確定するまでは、基本契約は締結するが、契約2以下のような個別契約を締結しないで、別に委任型のコンサルティング契約を個別契約として締結している。こうして、実際にシステム開発に入る段階で契約2以下のような個別契約を締結するようにしている。

6)成果物の納入及び検査(第19条)

 最近のユーザーの傾向として、契約の当事者とシステムの利用者が異なるケースがよく見られる。例えば、親会社が契約の当事者となっているが、実際にシステムを利用するのは子会社だったりする例である。従って、システム開発、仕様の凍結、システムの検収にあたっては実際の利用者に関与してもらう必要がある。

 特にVANサービスでは、開発したソフトウェアの利用者がユーザーの販売先であったり、仕入れ先であるケースが多い。何かトラブルが起きると契約当事者でない第三者からクレームがつく例もある。

 そこで、後のトラブルを回避するためには、三者間の契約にするか、契約当事者以外のシステムを利用する取引先にも、プロジェクトへの参加、検査などの立ち会いを求めたほうがよいケースが多くなっている。

 このような場合の一番よい方法は、中心となる会社とこの基本契約を締結して個別契約において利用者との間の事項を定め、これとは別に利用者との間においてもネットワークの利用についての契約を個々に締結するのがよい。

7)権利の帰属(第21条)

 情報処理を前提としたソフトウェア開発契約で問題となるのは著作権の帰属である。特
に情報処理契約が終了した場合に問題になってくる。

 すべてのプログラムが相手のコンピュータに入って処理が行われるのであれば、一般のソフトウェア開発契約のように著作権を相手に移転するのが通常であろう。しかし、こちらのコンピュータだけで処理を行うケースや、相手とこちらとで相互に処理を行うケースもある。

 外部に委託して情報処理を行おうとしているのか、それとも自営で行っていこうとしているのか、という情報処理に対するユーザーの考え方の違いである。この違いによって、開発したソフトウェアの著作権の帰属の考え方も異なってくるであろう。前者の立場に立つユーザーであれば、ソフトウェア開発契約にあたって権利の移転を要求してくるであろう。

 形態としては、①ソフトウェア会社がすべての権利を留保し、システムを稼働させるうえで必要な範囲でプログラムの使用を認める方法、②権利を共有にする方法、③一般の開発契約と同様にすべての権利をユーザーに移転し、情報処理のために無償で利用する方法などがあろう。

 この契約は前述したパターンの①に該当するもので、ユーザーがコンピュータシステムの移行などによってプログラムの譲り受けを希望する場合には有償で譲渡するという取り決めをしている。これは、ソフトウェア会社が有していたプログラムをカスタマイズし、ソフトウェア会社のコンピュータを利用して処理を行い、端末側のソフトウェアはユーザーが開発するということを想定している。

 オリジナルなソフトウェアを開発したというようなケースでは、委託料にもよるが、ユーザーに権利を移転したり、共有にするケースもある。また、処理に伴い通信制御のためのソフトウェアが必要であるときなどは、この契約とは別にソフトウェアの使用許諾契約を締結することもある。

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