第10章 保 守 契 約 書

 

1 保証条項・保守契約の問題点と契約文例
 コンピュータソフトウェアというのは、作成後実際に運用していくに従って徐々に完成度を増していくという特質を持っている。このようなことから、コンピュータ情報取引においては、一般の商品と異なり「保証しないことを保証する」というのが最も実態に合っていると考えられる。

 しかし、「保証しません」という表現は相当きつい印象を与えるので、文章表現には気をつける必要がある。例えば、「乙は、甲に対して現存の状態のまま提供します」としても、保証責任を相当免れることができるといえよう。また、「甲乙は別にメンテナンス契約を締結します」としても相当責任を免れることができよう。

 コンピュータ情報取引において瑕疵担保責任を免れる最良の方法は、検収後に有償のメンテナンス契約を締結し、これで瑕疵担保責任をカバーする方法である。こうすれば、ユーザーは一定料金で保守サービスが受けられ、ソフトウェア会社側も瑕疵担保責任を一応断絶できるわけだ。

 メンテナンス契約は先の分類からいくと委任契約あるいは請負契約と考えられる。このメンテナンス契約には3つの問題点がある。1番目は業務範囲の特定である。2番目は保守契約によって、元となるソフトウェア開発委託契約の瑕疵担保責任を完全に免れることができるかということ。3番目は保守契約に基づき提供した役務自体について欠陥があった場合の責任である。

 1番目の問題について、各契約書例を参照していただきたい。

 2番目の問題、すなわち元の委託契約に基づくソフトウェアの瑕疵担保責任と保守契約の関係については、保守契約を締結することによって瑕疵担保責任を相当免れる可能性はあると考えられるが、元のソフトウェア委託契約と保守契約とは別個の契約であり、保守契約を締結したことが、即元のソフトウェア開発委託契約の瑕疵担保責任の追求を免れることにはならないといえる。

 これは、メンテナンス契約の内容によっても異なってくる。「本契約を締結することによって、平成○年○月○日付けシステム開発委託契約に基づき乙が負っている瑕疵担保責任はすべて免れます」となっていれば問題はないが、メンテナンス契約を締結するときは、元の契約の保証責任(瑕疵担保責任)と保守契約の関係を明確にしておく必要がある。

 3番目の問題については、債務不履行あるいは瑕疵担保責任の問題と考えられるので、第6章を参照していただきたい。なお、ここで注意しておきたいことは、保守契約に基づき保守した場合には、元のソフトウェア開発委託契約の瑕疵担保責任とは別に、保守契約の瑕疵担保責任が新たに発生することである。この点の手当てが不十分な契約書が多いので留意する必要がある。

 

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